ろまんくらぶ「仮面の天使」139

「綺麗だね」

「これ?うん。野菜の彩りが層になっていて、とっても綺麗」

そうじゃないんだ。茉莉のことなんだという言葉を教授は飲み込む。

「、、、うん。美味しいね」

彼の笑顔はどこか寂しそうだった。今夜はなんだか酔いたくなってきたと彼は飲むピッチが上がって白ワインをボトルで頼む。

「なんだか飲むの早くない?」

「まあ、たまには、いいかなって」

「あんまり飲みすぎないでね。酔うと教授ってちょっとヘロヘロになるから」

「気をつけるよ」

そう言いながら、彼はグラスをぐいっと空ける。やっぱりなんだか変だなあと茉莉は感じるが、これ以上尋ねても彼は答えそうにもない。一旦喋らないと決めると、教授は頑固になることがある。その頑固さが彼の研究を支えてもいる。

メインディッシュが運ばれてくる頃には、彼は赤ワインのボトルを半分空けていた。茉莉は少し注意しながら、飲む量を加減していた。万一、教授が酔っ払ってしまうと、後が大変だからだ。彼は滅多に酔わないが、酔うと歩くのも面倒だと言い出す。そういう時は、側についていないと、フラフラとして、妙な歩き方になる。今日の彼はなんだか危ないなあと彼女は感じる。

「ああ、美味しいね」

茉莉の心配をよそに教授はさっきとはうって変わって満面の笑みを浮かべてパクパクと勢い良く肉を口にする。そんな彼の姿を見ていると彼女は思わずため息を漏らしたくなる。彼女の周りにはおかしな状況しかないのかなあと思う。だいたい健とのことだって、こじれたままだった。酔っ払っていく教授を前にして、彼女は頬杖をつきながら赤ワインのグラスを見つめる。